日本語教師の私が文法授業を考えるときに意識していること〜教案のポイントをシェアします〜

日本語の教え方

さじここさんは文型導入ってどうやって考えていますか?なかなか自分でうまく考えられなくて……

さじここ
さじここ

そうですね…私も新米の頃は苦労しました。では、私がいろんな方に教えてもらったことをお伝えしますね。

みなさん、こんにちは。日本語教師のさじここです。

このコロナ禍で、日本語教師の資格を取得しても日本語学校で働きたいのに働けず、プライベートレッスンをしている or 機会を待っている方が多いのではないでしょうか?

また、なかなか対面での実践を積むことができず、やきもきしている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そういった方のお役に立てるかどうかはわかりませんが、私が尊敬する日本語教師の先輩方から教わった授業のノウハウをシェアしていきたいと思います😁

今回は、『文法の授業を考えるときに意識しているポイント』についてお伝えします。

今ちょっと時間に余裕があるうちに、自分の授業スタイルについて見直したり、自分のメンテナンスをすることでいいチャンスがやってくるかも?!(私も自分のメンテナンスのためにこの記事を書いています(笑))

あくまでこれは私の体験や先輩方からの教えなので、『正解』ではありません。(そもそも教案作成に正解はないかと思いますが…)

参考になりそうだったら、ぜひ取り入れてみてください♪

教案とは…

日本語教師養成講座に通っている方、通われた方は一度は『教案』を書いたことがあるかと思います。

『教案』とは、文型の導入の仕方や流れ、練習方法などを時間軸に沿って書いたいわゆる「授業のシナリオ」みたいなもののことです。

具体的にはこんな感じ↓

だいたいこんな感じのテンプレで書いている方が多いのではないでしょうか?

このテンプレを見たらわかるかと思いますが、「どのぐらいの時間で」「どういう教材・教具を使って」「どんなことをするのか」を主に書きます。

活動」の項目はできれば、実際の会話形式↓で書くことをおすすめします。

(T:〇〇さん、昨日の夜は何を食べましたか? S:カレーを食べました)

「え?教案なんて書かなくてもいいよ。頭にはいっていれば問題ないさ〜」

という先生もいらっしゃるかもしれません。

私は実際、過去に出会った先生の中に「教案なんて書いたことがないし、書き方も知らない」と自慢げに笑って話す方がいらっしゃいましたが……😱

「書かない」のと「書けない」のは違います!

こんなことを書いている私も実は、もうこのフォーマットで書いていません😅

でも、学習ゴールや文型導入の流れ、練習方法、時間配分は毎回ノートに書いてシュミレーションしています。

日本語教師になって日が浅い方は、しばらくは教案を書いて押さえるべきポイントが自然にイメージできるように経験を積んだほうがいいと私は思います。(私個人の意見です)

また、日本語学校やその他の教育機関の採用面接には、模擬授業が求められます。

模擬授業の前に、学校側から教案提出が求められる場合がありますので、採用合格のためにも教案はしっかりかけたほうがいいです。

もし模擬授業がない日本語学校だったら、それはやばい日本語学校の可能性があるので注意してください(→やばい求人については過去の投稿を参照ください)

また、新米の先生が初めて採用面接を受けるときとてもとても緊張すると思います。

「何度も脳内でイメトレしてやってきたのに、本番の緊張のあまり頭が真っ白に……😱」

「あわてて、練習問題すっ飛ばしちゃった…😨」

「変な導入の流れになちゃった…😭」

やっぱり自分の採用がかかった模擬授業、それもベテランの日本語教師の前でやる模擬授業というのはどんなに経験を積んでも緊張するものです…😅

採用側もそういうことは承知してくれていて、そのために教案をチェックしながら面接を行います😁(ちゃんとした学校なら)

模擬授業後の面接では教案を元に、「さっきの導入の例文はどうしてあのタイミング出だしましたか?」「教案ではもう少し会話練習をやる予定で書かれていますね、その後を説明してもらえませんか?」など質問してくれるでしょう。

また、模擬授業はだいたい10〜20分程度しかさせてもらえないので、「導入〜基本練習まで」みたいに指定がくることが多いです。

その後の授業の流れは、教案を見て確認するので、1コマの授業全てを最後までしっかりデザインした教案が書けることが大切になります。

緊張して頭が真っ白になり模擬授業でやらかしても、教案に書いてあればその後フォローできるので、教案はしっかり書きましょう。

ちょっと話がそれてしまいましたが、『教案=授業のデザイン(設計図)』なので、押さえるべきポイントをしっかり押さえて授業内容を考えることが大切です😃

その1:かならず授業の「到達目標」を考える

私が通った養成講座の授業では、教案の冒頭に「学習項目」だけでなく必ず「到達目標」を書きなさい!と指導をうけました。

「到達目標」には、その授業のゴール「(学習目標文型を使って)〜ができる」のように具体的なcan-doで書くことをおすすめします。

では、学習項目が「〜(し)たことがある」だったら、あなたは到達目標になんと書きますか?

ちょっとご自身で考えてみてください😁

『自分の経験を述べることができる』と書いた方、いらっしゃるのでは?

私も新米日本語教師のときはこう書いていました😁

これでも間違いではないと思いますが、ちょっと抽象的かもしれません。

もっとその文型を使用する具体的な場面を意識して設定したほうがこのあとの文型導入や練習が活きてきます!!

具体的な場面を意識するとは……『どのような場面や状況で「誰に」「何のために」文型を使用するのか』ということです。

私も初めは「何のために」は考えられても「誰に」が抜けていて、常勤の尊敬する先生に指摘されました😅

では、「〜(し)たことがある」をこれに落とし込んで到達目標を考えてみると……

『友達と旅行の話をしているときに、相手の行ったことがある場所、ない場所、経験を尋ねることができる』

みたいな感じになります。

これも正解があるわけではないので、いろんなバリエーションがあると思います。

普段自分がよく使っている場面を想像して考えると思いつきやすいですよ😁

もし、なかなかピンとこなくて思いつかない場合は、とりあえず「抽象的な到達目標(自分の経験を述べることができる)を設定しておいて、導入や練習を考えていくときに修正しても大丈夫です!!

とにかく、「今日の授業は何をゴールにして進むのか」を決めておくことが大切かと思います。

ゴールが決まっていないと、どこをどのように走ればいいのかわかりませんから😅

その2:「到達目標」から逆算して考える

これは教案だけでなく、受験勉強や資格試験、プロジェクトなどに対しても言えることだと思います。

到達目標=ゴールが定まったら、あとはどうやってその目標に向かって進むかを決めましょう

私が教えてもらったのは、まず「応用練習を考える」ことです。

私はたいてい応用会話練習ができたら目標達成!としていますので、ペアでその文型を使った会話を考えてもらえるような活動をします。

例えばこんな感じ↓です。

A:来週の北海道の旅行、楽しみですね。

B:そうですね…。Aさんはすしを食べたことがありますか。

A:はい、あります。とてもおいしかったです。Bさんは?

B:私は食べたことがありません。この旅行で食べたいです。

A:じゃあ、すしのお店へ行きましょう。

B:いいですね!楽しみです。

この会話モデルを提示して、下線部をペアで変更し自由に会話をしてもらうという活動をよくしています。

文字だけだと、なかなかアイディアが思いつかず会話が進まない場合があるので、ヒントとして使えそうな動詞や言葉を絵で提示するときもあります。

そのへんは学習者のレベルに応じて変えるといいかと😁(できるペアはテンプレートを気にせず、自由に会話を考えてもらいます)

お気づきかと思いますが、この応用会話例は「到達目標」と関連して考えます

私は「文型を使用する日常会話を頭で思い浮かべる→到達目標を設定→頭で思い浮かべた会話をレベルに応じてアレンジして応用練習を考える→導入を考える」という逆算でいつも授業を組み立てているので、常に場面を意識しています。

私はこれを意識したことで、「この文型習ったけど、いつどこで使うの?」「習ったけど使えない…」という質問や現象が起きにくくなりましたよ😁

今スランプ中の方は、逆算方式を取り入れてみてはいかがでしょうか?

その3:文型導入を考えるときに気をつけるべきこと

文型導入場面について

みなさんは文型導入するときに、いくつ導入を考えますか??

私は毎回最低2〜3つは考えて準備しておきます。

というのも学生によって(国によってい)ピンとくる人とそうでない人が必ず出てくるからです。

これはおそらく養成講座などでもいわれていることだと思います。

また、以下の3つのポイント↓を考えながら文型導入を考えたほうがいいです。

①何のために言うのか

②どんな場所、状況で使用するのか

③話者の気持ち(ニュアンス)

「げ?3つも???😨」

と思われたかと思いますが、逆に学習者の立場になって考えてみてください。

中学生のころ初めて「will」と「be going to~」を習うかと思います。

私がこの2つを習ったとき「どちらも『〜するつもりだ』の未来を表す」「be going to~ は過去の予定を言うことができるけど、willでは言えない」としか教えられませんでした😅

でも、後々外国人と英語で話すとき「この2つはどう使い分ければいいのか?」「なにかニュアンスがあるのではないか」と感じるように……

もっと使う場面に根ざして教えてほしかったなぁ…と今思います。

日本語学習者もきっと、「ニュアンス」や「具体的な使用場面」を知りたい!そして「日常生活で使いたい!」と思っているはずです!

例えば、「受け身」の導入でただ単に、母が娘を怒っている絵を見せて、

お母さんは怒りました」→「私はお母さん怒られました

と変換して見せるだけでは、学習者は受け身をいつ使えばいいかわかりません。

そういうときは、

「ネイティブはどんなときに受け身を使うのか?」

「どういう気持ちで使うのか?」

「どんな場面で誰に対して使うのか?」

を紐解いていきましょう♪

自然に使用場面が具体化されるかと思います😁

上の3つのポイントに「(私は)お母さんに怒られました」例文を当てはめて具体的な場面を考えてみると……

私が浮かんだのは……

仕事から帰ってきたお父さんが機嫌の悪い娘に「どうした?なにかあった?」と聞いて、娘が悲しそうにお母さんとのやり取りを報告している場面です(笑)😅

どうですか?

みなさんもいろんな場面が浮かんできましたか?

自分がいつ使っているのかを考えるといいかと思います。

この思いついた設定場面を学生との会話やりとりを通じて共有してから文型導入に入ります。(そのとき絵などを補助で使用してもOK)

「このシチュエーションのとき何と言ったらいいだろう?」

と、まだ習っていないけど学生にチャレンジしてもらうと、今までの既習文型を学生は一生懸命思い出して頑張って答えようとしてくれます。

そういうやり取りをすると学生自身の「気づき」が増えます😃

この「気づき」は第2言語習得(SLA研究)でも重要だと言われています。

「気づき」とは、教師の説明や強調したことを表すのではなく、学習者自身の中で自発的に怒る認知的な働きを指している。それは単に形式に注目するという意味ではなく、ある形式が、どういった場面でどのような意味を伝えるかということに気づくことである。

引用元:和泉伸一『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語教育』アルク,第2章,pp52−53

また文型提示が終わったら、上記の3つのポイントを学生からも引き出し、使用場面について理解確認をするといいでしょう。

私は言葉でさらっと説明していますが、なかなか難しいですよね……😅

私も初めはなかなか実用的な場面提示ができず悩みました…

でもベテランの先生からこのポイントを教わって意識し始めたことで、自分の導入がすっと学生にはいってくようになりましたし、授業全体にまとまりが出ました😃

私が尊敬する日本語教師の先生の授業見学をさせてもらったときに、この「場面提示」が導入の全てだと感じました。

「こういうシチュエーションあるある!」

「そういうときなんて言ったらいいんだろう?」

「言いたいんだけど、今まで習った文型では適切に表現できない!!知りたい!」

と、日本人の私でもそういう気持ちになり、いろんな気づきがありました😚

授業がうまい先生の授業はどれも上記の3つのポイントが意識され、学生に気づきを与える仕掛けがありました。

文型導入後の練習について

文型導入、活用確認したあと練習に入ると思いますが、ここでもちょっと注意が必要です!

練習問題はいきなり自分で考えさせるものではなく、まずは…

「口頭で活用や接続の変換練習(口ならし)」→「文単位での変換練習」→「QA練習」

みたいな感じで、徐々に難易度をあげることが大切です。

いきなり分単位での変換練習ができる学生もいるかもしれませんが、活用でつまづいている学生もいますので、取りこぼさないように練習することがクラス授業では大切です。

(2〜3個口頭で確認してできていたら、次にいけばいいのでそんなに時間はかからないと思いますよ😅)

でも、ドリル練習だけでは文型を使いこなせるようになるのは難しいので、「自分の頭で考えたものを自分の言葉で言える」ような活動は必要です。

しかし、いきなりそれはハードルが高いので、私は口頭やフラッシュカードを使ったりして、ドリル練習を行い「形」を覚えさせます

言語が使えるようになるには「意味」「形」「機能」の3つが必要と言われていますから😚

ドリル練習に否定的な方はいらっしゃると思いますが、私の経験上、クラス授業でこれをすっ飛ばして会話練習だとついてこれない学生がでるので…徐々に難易度を上げる手法でやっています。

基本練習が終わったら、あとは先程考えた応用練習につなげます。

まとめ

「教案」と題して書きましたが、教案というより授業の組み立て方(デザイン)の方法でしたね…😅

私は「すぐ使いたいと学生に思わせられる場面」を意識して授業を組み立てています。

ここで書いたことはあくまで私が教えてもらった方法と私自身の考えなので、これが正解というわけではありません

学生によってさまざまな文法の教え方があると思います。

いろんな方がブログなどで教案の書き方や文型導入のノウハウを提供してくださっていると思いますので、いろいろ読んで自分に合うものを取り入れるのがいいかと思います。

私はこちらで紹介した押さえるべきポイントなどは「ノート」と「Googleスライドのノートの部分」に書いて保存しています。

新米の頃は毎回イチから考えなきゃいけなくて授業準備がとても大変でしたが、今では初級の文法に関してはかなり蓄積されていますので、どんな教科書でも(学校オリジナルテキストでも)どうにか対応できるようになりました

初めの3年ぐらいはコツコツ教案をためて、自分の文法の分析力をつけることをおすすめします。

どんなレベルでも分析力、上記の3つのポイントは活かされますから😚

最近ではネットで教案を検索すると親切にモデル教案を提示してくれているサイトがあったり、学校で他の先生の教案をみんなで共有していたりします。

使えるものはどんどん使っていいと思います!!

私も時々お世話になっています(笑)😅

あ、でも、採用面接のときの模擬授業では人様の教案の丸々コピペは危険ですので、やめましょう。(案外バレます😅)

でも、たま〜に文法の説明が違っていたり、接続が間違っていたり、文法の機能が違うのにごちゃまぜに提示されているものも見かけるので、必ず自分の頭で判断して使うようにしてください。

このブログも同じで、正しい情報をお伝えするように心がけていますが、たまに間違っていたりしますから、その場合はご一報いただけると助かります。

色々盛り込みすぎて、長々書いてしまいました。。。

それでも、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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