中級のクラスのN2の語彙を担当することになったのですが、どうやって教えればいいか分かりません……
なかなか語彙の授業って難しいですよね。私がよく使う便利なサイトをシェアしますね!
こんにちは、日本語教師のさじここです。
みなさんは語彙をどうやって教えていますか?
初級のときは絵カードを使うことが多かった語彙ですが、中級以上になると抽象的な言葉が増えて絵では表すことが難しいかと思います。
かと言って、言葉だけでうまく説明しようとするとどうも日本語レベルが上がってしまって……うまく伝わらなかったり……😅
そんなお悩みある方いらっしゃいますか?
私もその1人でした。
最近はテキストに対訳が書かれていて、教師が時間をかけて語彙を教えることはあまりないかもしれませんね。
でも、学生は「語彙の使い分け」こそ教えてほしいようです。
これは上級の学生からの要望で、言われたときは目から鱗でした。
たとえば……
「この箱には本が三冊収まる」と「この箱には本が三冊入る」は何違いますか??
と聞かれたら、皆さんどう答えますか?
日本語には類義語表現がたくさんあります!
文法の類義語表現はわりと参考書なんかも発売されていますし、JLPTで狙われるポイントでもあるので、しっかり授業をしていると思いますが、語彙の類義語ってあまり授業では扱われていないような……?
といことで、学生からの語彙の類義語を聞かれた時に対応できるように、教師側も類義語表現を意識するといいかと思います。
私が実際にやっていることなどを紹介しながら、中級以上の授業準備に役立つ情報をシェアしたいと思います。
思ったよりも記事が長くなりましたので、前編/後編に分けました。
最後までお付き合いいただけたら幸いです😊
語彙の教え方「きほんのき」
みなさん、語彙ってどうやって教えていますか?
最近のテキストは対訳語彙表がついていますし、授業スケジュールタイトで、あまり語彙をじっくり教える時間もない……そんな方が多い気がします。
私も初級授業をしていますが、語彙をゆっくり扱う時間がありません🥲
しかし、中級以上になるとよく「AとBの違いってなんですか?」の質問が飛んできます……
そりゃそうですよね、レベルが上がると語彙が増えていきますから(笑)
あまり語彙の教え方をじっくり考えてきたことがなかった私は、中級の学生を受け持つことになったとき何度もヒヤッとした経験があります😰
みなさんもそんな経験ありませんか?
語彙を教えるときに私が大事にしていることは、文法と変わりません。
「いつ、どこで、誰と、どんな状況で」使用するものなのか?
それを意識して教えています。
以前書いた、「形容詞を教え方」の記事を読んでいただけるとわかるかと思います。
名詞を教えるのはそれほど難しくないと思います。
でも、絵に表せなくなる、抽象度が高くなるにつれて教師の教えるスキルが問われるかと……😅
というのも、言語によってはその言葉にぴったり合う言葉がなかったりするので。
イメージが思い浮かばないという方もいらしゃると思うので、具体例を!
最近教えるのに困った語彙は……「うまみ」です。
私が最近プライベートレッスンをしていて「うまみ」が何なのか聞かれたとき「はて……どうしたものか……」と悩みました(笑)😅
「うまみ」は英語で「umami」です。
英語にはぴったり合う語彙がないので、そのまま日本語を使用しているそうです。
みなさんは初級終わったぐらいの学生に「うまみ」が何なのかを説明できますか?
語彙を教えるときも、もちろん、学習者のレベルによって使用できる「語彙」も「文法」も制限されます。
語彙もだらだらと説明しがちなんですけど、それだと学習者は全然わからない……😥
また、学習者がわかる状況やイメージを一緒に共有していないと、語彙の意味(ニュアンス)はなかなか伝わらない。
「うまみ」の例でいうと、私は日本のラーメンを食べたことがない相手にずっと「ラーメンのスープに入っていて、魚の骨などで作る」と説明していました。
でも、学習者は「よくわからない、先生……」となりました😭
これは私がめちゃくちゃ困った失敗談です(笑)
つまり、「学習者がイメージしやすい場面、経験したことがある場面」を教える時に使用すること重要なポイントになります。
そして、それは何パターンも用意しておいたほうがいいです。
文法と同じで1つの使用場面で意味がわかる!ってことはないかと思います。
私は「うまみ」を教えるために、「ラーメン」がだめなら、「チキンスープ」、「チキンスープ」がダメなら「味の素(レアリア)」みたいな……(笑)
あの手この手で品を変え、状況を変えて伝えるように心がけています😅
あとイメージする範囲をだんだん狭められるよう具体的な例を出します。
具体例を提示する時に相手にQ&Aをたくさんして、同じ場面を学習者さんとシェアできているか確認しながら進めます。
そうすると、学習者さんが話の中で迷子にならなくてすみますよ😊
で、「うまみ」はどうやって伝わったのかというと……
「チキンスープ」を作る時に色々な野菜とか煮込んでコンソメ作る過程をイメージさせて、食材のおいしいものが出てそれが「うまみ」になってスープの味がよくなるんだという話をしました。(ちょっと違うかもしれませんが…笑)
私がこのように一方的に説明したのはいいですが、問題は相手が本当に語彙の意味がわかったのか?伝わったのか?は、これだけだとわかりません😓
学習者さんはわかっていないのに「わかりました」とよく言いますから、「理解確認」は必要です。
みなさんは相手が理解したかどうかを確認するとき、どうしますか?
理解確認の方法
「うまみ」の話では、私は理解確認のために、「『うまみ』がある料理を知っていますか?」と聞いてみましたよ😊
で、学習者さんはその私とのやりとりの中で「出汁も「うまみ」ありますか?うどんスープとか。YouTubeで見ました」と言ってくれたので、ほっとしました。
このように、相手がわかったかを確認できる「理解確認の質問」も文法を教えるときと同様、大切です。
「理解確認の質問」は語彙だけでなく文法を教える時にも結構大切にしているポイントですよ😊
「理解確認」をするときは、初級の学習者さんには日本語で説明を求めず「英語で何と言いますか?」と聞くときもあります。
たとえば、「さんぽ」の説明をしたあと、「『さんぽ』は英語でなんと言いますか?」とか……
中級以上の学習者さんの場合は、日本語で説明してもらったり、似たような表現に言い換えてもらったりしています。
これは文法のブラッシュアップにもつながるのでおすすめです!
自分の中の語彙や文法で言い換えたり説明するのって慣れていないとちょっと難しいと思います。
しかし、日常で役に立つスキルになるかと!
会話力も上がりますから😀
他の「理解確認」の方法としてやっているのは……「教えた語彙を使って文を作成してもらう」ことですかね。
これはみなさんよくやっている方法ですよね😅
中級以上だとかなり効果的です!
というのも、中級以上の語彙は結構使用できる状況や場面、相手が限られる語彙も中にはあるからです。
結構、変な文を作ってくるケースもあります。
ぜひ、使用場面がちゃんと理解できているかを確認しましょう!
学習者さんが変な文を作ったとき、どうフィードバックするかも教師側の腕の見せ所ですね!
このあいだ、上級レベルの授業でやったのは「取り沙汰される」です。
ネットの辞書で調べると以下のようなことが書いてあります。
「取り沙汰される」
引用元:goo辞書「取り沙汰」https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%8F%96%E6%B2%99%E6%B1%B0/(2023.8.10アクセス)
- あれこれとうわさすること。また、そのうわさ。「とかくの―がある」「世間で―する」
- 取り扱って処理すること。
紙の辞書で意味を引くと引いても「うわさ、話題になる」と出てきます。
これは新聞などで目にする語彙であることからも、堅い表現になり日常生活ではあまり使用しませんよね?
学生に「取り沙汰される」を使ってペアで文を作って発表してもらいました。
あるペアが「クラスメートの田中くんが取り沙汰されている」という文を発表。
これは、一見、間違っていないかのように見えますが、日本語ネイティブの人は「取り沙汰される」をこのような場面で使用しているでしょうか?
友人の田中くんがクラスメートの話題になっていることをクラスで話す時に「田中くんが取り沙汰されている」とはあまり言わないのではと思います😅
どちらかというと「田中くんが噂(話題)になっている」のほうが日常会話ではしっくりきますよね……
全く会話では使わないとは言い切れませんが、なんだか畏まった言い方に聞こえませんか?
つまり「取り沙汰される」は日常会話(小さい事柄)ではあまり使用しない傾向があり、どちらかというと書き言葉的、固い表現なので、いつでもどこでも使用できるわけではないことを学習者に伝えなければなりません。
発表した学生が日常の場面んで「取り沙汰される」を多用したら、なんだか違和感のある会話になってしまう……😥
学習者はせっかく習った言葉は使いたいと思うはず……なので、導入時に使用できる場面を伝えるというのはこういうことにもつながるわけです。
「学習者が使用場面を誤ると不利益を被る」こともなかにはありますから、日本語教師として「使用できない場面(使用しにくい場面)」を伝えることは重要なポイントです😊
話が逸れてしまったので、「理解確認の方法」まとめます。
動詞を教えるときのポイント
みなさん動詞を教える時って「助詞」を一緒に教えていますか?
教科書によっては語彙リストに動詞のグループは書いてあっても、「助詞」がのっていない場合もあります!!
でも、個人的にはそれだと学習者さんにとって不親切な気がします。
その理由は、学習者さんは「助詞」が苦手な人が多いからです。
動詞を覚える時に助詞とセットで覚えないと文が作れないので、私は自分が語彙を導入する時は、たとえテキストに「助詞」が書いてなくても追加で学生に教えています。
もしある動詞が自動詞なのか他動詞なのか忘れてしまっても、助詞を覚えていたら判断するきっかけになります。
また、動詞の中には「階段を降りる」「1階に降りる」のように名詞によって助詞が変わることもありますので、助詞は動詞と一緒に教えたほうがいいでしょう。
動詞の中には多義語があります。
初級では、最もよく使用する意味を教えていると思いますが、中級以上になると辞書の2、3番目の意味を教えることになりますし、発音は同じでも漢字が異なると意味が変わるものもあることを伝えなければなりません。
例えば、冒頭の「おさめる」は「収める」「治める」「納める」がありますね。
漢字が苦手な学習者さんに、上記のような例を出して教えると「漢字を覚えるとめっちゃ便利!頑張って覚えた方がいいかも……?!」となる場合もあります。
私の学習者さんはそのおかげかわかりませんが、漢字はいらない!と中間テストで言っていたのに、独学で500個の漢字を自分で覚えてきて、周囲に「漢字ってめちゃcoolだと思わない?!」と、自慢していました(笑)
学習者さんの「語彙」と「漢字」「文法」が繋がると、日本語の世界が一気に広がる気がします。
中級以上であれば、動詞を教える時にたとえ難しい漢字であっても一緒に書いて見せてあげると、学習者さんの日本語の世界の拡張に役に立つかと思います😊(あくまで個人的見解ですが)
長くなりましたので、ここで語彙の教え方のポイントをまとめます。
語彙の教え方で便利なおすすめ書籍
「こんな記事の説明ではよくわからないよ〜〜〜!😭」
と思った方はぜひ、以下の書籍を読んでみてください。
おすすめ①『日本語教師の7つ道具シリーズ4 語彙授業の作り方編』
おすすめ②『実践にほんご指導見なおし本 語彙と文法指導編』
私は読んで道が開けたような感覚になりました!個人的におすすめの本です😁
類義語を調べるならやっぱり辞典ですかね!
おすすめ③『類義語使い分け辞典ー日本語類似表現のニュアンスの違いを検証する』
こちらは最近電子書籍版もリリースされたそうです!
類義語辞典は一冊は持っておくと便利です!
もちろん、国語辞典もですよ!
おすすめ④『新明解国語辞典』
「日本語教師ならぜったい一冊は国語辞典を買いなさい!」と養成講座の先生に言われたことがあります。
辞典って高いので、買うのを渋っていたんですけど、中級以上のクラスを受け持ったときに「ないと困る!」と思いました😰
「ネットで調べればいいじゃん!」って思うかと思いますが(私もそう思っていた)やっぱり時々、信憑性が……
その点、出版社から販売されている書籍はちゃんとしているので信頼できます!😱
辞書もいろんな出版社から出ていて、個性がありますよ〜✨
同じ言葉を調べても、意味の書き方が若干異なり、おもしろいです。
私が個人的におすすめなのは「新明解国語辞典」です。
例文がちゃんと載っていて、日本語教師として知りたい語彙の意味のポイントが掲載されています。
「広辞苑」も持っていますが、日本語教師として使用するなら「新明解国語辞典」のほうが授業に役立つかと……
古本屋でも辞書はたくさんあると思いますので、ぜひいろんな辞書を手に取って自分にしっくりくるものを選んでください😊
まとめ
いろいろ紹介しましたが、語彙の教え方って奥が深いですよね……
私も日々悪戦苦闘しています😅
語彙が上手に教えられるようになると、文法の教え方も変わってくると思います。
私がそうです。
やっぱり「文法」にフォーカスしがちですが、語彙や漢字の教え方も大切で全て繋がっていると最近とても感じます。
中級以上の語彙の教え方&役立つ無料サイトなど(後半)では、便利な無料サイトを紹介していますので、そちらもぜひお読みいただければと思います😄
最後までお付き合いいただきありがとうございました♪
note↓ではブログに書いていない授業風景や裏話などをたまに書いていますので、そちらもお読みいただければ幸いです。
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