量的調査についてなんとなくわかってきた気がします。質的調査についても興味があるので教えてほしいです!
じゃあ、質的調査についてのざっくり説明を始めますね!両方知っておくと調査の選択肢が増えますよ!
こんにちは、日本語教師のさじここです。
今回も前回に引き続き、研究の分析手法についてのpart2です。
前回は「量的調査」をお伝えしましたので、今回は「質的調査」の話になります!
「量的調査」について知りたい方は以下の記事を読んでみてください😊
私は質的調査で修士論文を書きました。
しかし、私がやりたかった質的分析をやっている先輩や先生があまりおらず、手探りでやりました(笑)
私が参考にした書籍はこの記事やゼミで紹介してもらった本は記事内で載せていますので、参考になさってくださいね。
最後までお付き合いいただければ幸いです😊
質的調査について
前回の記事でもお伝えしましたが、質的調査は、少数のグループや個人を対象に観察、対象者にインタビュー、記録物などの文章から数量的にはわからないデータを集めて分析する方法です。
なので、研究内容も個人のライフスタイル、個人のビリーフ、個人の考え方など、数値化が難しい個人の内面を深く探っていく研究が多いです😊
私の修士論文でも、ある事柄に対してインタビュー対象者は「どう思っているのか」「どう捉えているのか」をインタビューを通じて明らかにする……という感じです。
質的研究の多くは、まずインタビューをして、その後、そのインタビュー内容を文字起こしし、インタビュー内容を分析をしていくという流れです。
量的調査に比べて、質的調査は分析手順がきっちり決まっているというわけではないのが特徴かと思います。
その一方で、「主観的な調査ではないか?」「信頼性が薄い」などの問題も生まれるので、調査手続きをしっかり他者に説明できるようにしておく必要があります。
この辺りは次に紹介するSCATを開発された大谷先生の論文↓をお読みいただければと思います。(論文リンクに飛びます)
大谷尚(2017)「質的研究とは何か」『YAKUGAKU ZASSHI』 137(6) ,pp653-658 .
質的調査にもいろんな方法があります♪
私が知っていることをざっくり紹介しますね😊
質的調査の分析方法
私が知っている質的調査の分析方法をざっくり紹介するとこんな感じ↓です。
- ①PAC分析
- ②M-GTA
- ③オープンコーディング
- ④KJ法
- ⑤SCAT
- ⑥談話分析
- ⑦テキストマイニング
- ⑧ライフストーリー
- ⑨TEA
けっこう色々あるな〜って感じですよね!
でもこちらの分析方法のほとんどがインタビューデータをもとに分析していく手法です。
この9つの詳細をこちらの記事で説明することが難しいので、簡単な説明と分析手法のおすすめの書籍を紹介していきますね😊
質的調査の参考書籍 [全体像把握したい人向け]
A)「〔改訂版〕日本語教育学の歩き方ー初学者のための研究ガイド」
はい、こちらは量的調査の記事でも紹介したもう私の研究入門バイブル的な本です!
こちらには量的調査の紹介、説明だけでなく、質的調査についてもしっかり書かれていますので、研究手法ってどうしたらいい?どんな研究をやろうか……と迷っている人におすすめです。
「インタビュー調査をやりたい!」「外れ値を研究したいんだ!」「もっと個人の内面を深く調査したい!」と質的研究に心惹かれている方は次の書籍がおすすめです。
B)「質的研究法マッピング(ワードマップ)」
タイトルから分かるように、さまざまな質的研究法の特徴をマッピングしてくれているので、どんな分析がどんな調査に適しているのか理解することができます。
また、こちらにはそれぞれの分析手法の必読書や参考書が紹介されているので、気になる分析手法を自分で学ぶ入口になるかと。
C)「はじめて「質的研究」を「書く」あなたへー研究計画から論文作成までー」
こちらは①②にはあまり書かれていない論文作成までのノウハウが詰まった一冊です。
著者の太田先生は日本語教育の方です😀
インタビュー調査を行う前の心得的なものが載っていますので、調査開始前に読むといいと思います。
インタビュー調査ですが、知り合いといえど、ちゃんと文書などで調査依頼書を渡し、調査協力者が不利益を被ることのないよう(個人情報の扱い、調査を中断する権利など)説明、承諾を得ることが重要です。
そのあたりのことが詳しく掲載されているので、一読されるといいと思います。
研究をするにあたって「研究倫理」を守ることは重要ですので、大学院の授業でも扱われているかと思います。
でも、調査依頼書の書き方までは詳しく指導がない場合は、ご自身でこういった本を参考にし文書作成、調査を進めていくのがいいかと。。。
書いた調査依頼書はぜひ指導教官にみてもらって、それで大丈夫か確認しましょうね。
D)日本語教育のための質的分析 入門
こちらは、共同著者の方々が行なった質的研究が具体的に詳細に説明されている書籍です。
私はこちらを読んだ時「こういう研究アプローチもできるんだ!」と感銘を受けました✨
この記事では紹介できない「ライフストーリー」に関する研究も紹介されています。
また上記で挙げた本は解説本的なものですが、こちらはどちらかというと論文集みたいな印象です(個人的な見解です)。
ただ、研究者がどうしてその問題を取り上げ、どのように調査を行い、結果が導き出されたのかというプロセスがよくわかるので視野が広がる一冊だと思います!😊
質的調査の参考書籍 [それぞれの分析方法についての本]
①PAC分析についての書籍
●PAC分析実施法入門ー「個」を科学する新技法への招待
PAC分析をざっくり説明すると、調査対象者に「連想刺激文」というものを与えて、調査対象者の意識や態度を探るというものです。
刺激文についてのイメージ(語や文)を答えてもらうところからスタートし、それを数値化(イメージが近い・遠い)してデンドログラムを作成し項目群のクラスターを作ります。
その図を調査協力者に見せながら、クラスターの印象や関係などについてインタビューをし、結果を解釈する……というものです。
はい、読んでもなんのことかわからないですよね?!!😅
上記の本を読んでみる、もしくは、「PAC分析」で研究した論文を読んでみてください。
(デンドログラムがブログに載せられないので、わかりにくくすみません……)
私はゼミでPAC分析の体験をやったことがあるのですが、PAC分析はイメージを数値化していくのでちょっと量的調査っぽいなと思いました。(統計手法を活用しているので当たり前ですが😅)
ただ刺激文をうまく作らないと失敗します😓
そして、デンドログラムを作成するにはSPSSというソフトが必要ですから、そのあたりをどうするか考える必要があります。(もしかしたら、ネットに類似ソフトがあるかも??)
指導教官の中にはソフトを持っている可能性がありますし、大学の図書館のPCに入っている可能性もありますから、周りの人に相談してみてください。
試しにやってみないとわからない、かつ失敗すると思いますので、やったことがある方に教えてもらう、かつ、本調査の前に予備調査を必ずしましょう♪
②M-GTAについての書籍
●定本 M-GTA :実践の理論化をめざす質的研究方法論
M-GTAは、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory approach)のことです。
修正版???と思った方はぜひご自身で「グラウンデッド・セオリー・アプローチ」を調べてみてください。
こちらの分析手法はお作法があるようですので、まず手順を書籍で確認するといいと思います!
③オープンコーディングと④KJ法についての書籍
③のオープンコーディングはさまざまな分析手法で使用されています。
おすすめ参考書籍は佐藤先生のものです。
●質的データ分析法ー原理・方法・実践
こちらの本の中にKJ法も紹介されています😊
●発想法 改版 – 創造性開発のために
KJ法の「KJ」は開発者の川喜田 二郎先生の名前からとったそうですよ。
こちらの手法はときどき社内研修などでも用いられています。
ポストイットにアイディアをどんどん書いて、似たようなものをグループしそのグループ名をつけてアイディアを概念化していく……感じです。
こちらも「KJ法」で検索するとたくさん論文が出てくるかと思います😄
⑤SCATについてのサイト
SCATは先述したように大谷尚先生が開発されたものです😊
以下の2つの論文↓を読んでみてください。
SCATは手順がわかりやすく、論文にするときもデータを見せやすいかなと思います。
SCATについて知りたい方は以下のサイト↓をご覧ください。
SCAT Steps for Coding and Theorization 質的データの分析手法
こちらのサイトにはSCATを使用し分析した数々の論文がリスト化されています😄
SCATに興味があるかたはぜひご覧ください。
⑨TEAについての参考書籍
すみません、いっきに⑨のTEAに飛びます。
⑥談話分析 ⑦テキストマイニング ⑧ライフストーリー についてはすみませんが、ご自身でお調べください 😅
というのも、名前は知っているし内容もなんとなく分かるのですが、お伝えできる情報があまりなく……😭
ということで、最近有名になってきた⑨TEAについて紹介します!
こちらはご存じない方もいらっしゃるかと思いますのでまず簡単に説明をしますね。
そもそもTEAとは何かというと……
TEA(Trajectory Equifinality Approach:複線経路等至性アプローチ)は、異なる人生や発達の経路を歩みながらも類似の結果にたどり着くことを示す等至性(Equifinanlity)の概念を、発達的・文化的事象に関する心理学研究に組み込んだヴァルシナー(Jaan Valsiner)の創案に基づいて開発された。
引用元:『質的研究法マッピング』サトウタツヤ・春日秀朗・神崎真美(編)p.16
そして、TEAはTEM(Trajectory Equifinality Modeling:複線経路等至性モデリング)を使用し、インタビューデータをもとにTEM図を書いて分析を行います。
こちらも何言っているかわからないと思います(笑)
気になる方はまず、「TEA」を使って分析した論文を検索し、読んでみてください😅
やってみたいかも!と思った方は以下の書籍を参考にするといいと思います。
以下の書籍は、冒頭で紹介した書籍「質的研究法マッピング(ワードマップ)」の著者のサトウタツヤ先生が書いていらっしゃいます。
なので、こちらの「質的研究法マッピング(ワードマップ)」にも簡単な解説がありますよ。
●TEMではじめる質的研究:時間とプロセスを扱う研究をめざして
●TEMでひろがる社会実装:ライフの充実を支援する
●TEAによる対人援助プロセスと分岐の記述:保育、看護、臨床・障害分野の実践的研究
TEAは学会があるそうです。
TEAと質的探究学会→https://jatq.jp/index.html
新しい分析手法ですから興味がある方はぜひ学会や勉強会に参加してみるといいかもしれません😊
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「量的調査」と「質的調査」を2回に分けて紹介してみました。
やりたいことをどうやって分析したらいいか……というのはもう修士1年の最大の悩みだと思います😅
質的研究の分析手法は、「見せ方をどうするか?」つまり、「食材は同じだけど和食にするのか洋食にするのか、それとも中華にするのか?」ということだと私は教えてもらいました。
その見せ方(分析手法)を色々知ることが修論の大きな一歩かもしれませんね。
余談ですが、この記事を書くのにめちゃくちゃ時間かかりました〜〜(泣)
丸一日ぐらい??😅けっこうなボリューム!!
すみません、いつもより文字数かなり多いので、誤字脱字があるかもしれません……あったらコメントからご一報ください😭
改めて、家にある書籍を読み返したり論文を読んでみたりすると、大学院時代にはわからなかった専門用語や理解があいまいだった部分がちょっとクリアになったことに気がつきました!
ちょっと私も成長してる??(笑)
ご自身のやりたいこと、明らかにしたいことに合う手法がみつかることを願っています✨
この記事がそのちょっとしたきっかけになれたら幸いです。
たくさん書籍を紹介しましたが、科研費をもらっている先生じゃないかぎり全ての本を自腹で買うのは難しいと思います(笑)
専門書は高いですから……
大学の図書館で購入リクエスト制度があるはずですので、そういうのもうまく利用するといいと思います。
この記事がみなさまの研究の役に立ったら幸いです😊
修論の具体的な書き方(ロードマップ)が知りたい方は以下の記事↓も読んでみてくださいね♪
ブログの更新連絡や、ブログで書ききれなかったこぼれ話などはnoteに書いていますこちらもぜひよろしくお願いします😊↓
最後までお読みいただきありがとうございました😊
あ
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