初級の学生に漢字も教えているのですが、学生たちは文法の時間よりつまらなさそうにしています。学生の漢字学習のモチベーションを上げるにはどうしたらいいですか?
その気持ちよくわかります。学生によって漢字を覚える意欲にばらつきがありますよね〜。私がやっている漢字授業のノウハウをシェアしますね。
こんにちは、日本語教師のさじここです。
先日、SNSで「漢字授業ってどうやったらいいかわからない……」という投稿が流れてきました。
特に初級は文法と漢字はセットになってることが多いので、ほとんどの先生が漢字を教えているのではないかと思います。
しかし、学生の方の漢字へのモチベーションは文法に比べて差がある気がしますし、漢字圏の国出身か非漢字圏出身かも漢字学習には大きく関わってくるので、クラスマネージメントが大変だったりします😅
私は日本語教師になりたての頃、漢字授業は「読みと書きをさらっと確認しておわり!」みたいに流してしまっていて、あんまり漢字指導について深く考えていませんでしたから、学生からしたら私の感じの授業はおもしろくなかったと思います😞
それではダメだと思っていても、
「どうやったら面白い、学生が食いつく「漢字授業」ができるのか?!」
「他の先生はどうやって漢字を教えているのか?」
自分だけで考えていてもわからないですよね?!😅
そこで、今回はそんな私が今まで出会った日本語教師の先輩方から教えてもらったノウハウと、私が実践していることをシェアしたいと思います。
漢字授業が苦手、うまくいかなくて困っているという日本語教師のみなさんの方のお役に立てたら幸いです!
学生が漢字嫌いになってしまう理由……
具体的なノウハウを提示する前に、初級の学生さんからの「漢字についてどう思っているか?」の返答を紹介したいと思います。
よく聞く意見が……
- 漢字は読み方(音読み、訓読み)があるから混乱する。
- 形がなかなか覚えられない。書けない。
- 漢字を組み合わせると読み方が変わる(例えば、二十歳:はたち)のはなんで?!
- 送り仮名が難しい。
- 中国の漢字と形がときどき違う……意味も時々違うし同じのもあるから混乱する。
- ひらがな、カタカナ覚えた後にまた文字覚えるのが限界……ひらがなでいいじゃん!
こんな感じです。
どうでしょうか?みなさんも学生さんからよく聞くのではないでしょうか?(笑)
学生さんの中には、まだ教科書も開いていないのに、「苦手!」と公言する人もいます(笑)
新しい文字アレルギーみたいな感じですね。。。😅
とはいえ、漢字は日本で生活する上で重要です。(By 私の学習者)
また、大学進学やJLPT合格を目指す人は漢字の知識を増やしていかないと目標に届かなくなってしまう可能性もあり、漢字学習は学生さんにとっては、がんばってでも超えていかなければいけない壁のようなもの……😭
「漢字が好き!覚えるの楽しい!と」いう学生さんはこちらから何かアプローチせずとも、モチベーション高いのであまり心配はないかと思います。
漢字学習のモチベーションがそんなに高くない学生さんをどうするか?
どうやって彼からのモチベーションを上げていくか?!
いかに漢字授業を楽しんでもらうか?
それが漢字授業での一つのキーポイントだと思います。
それでは、そんな学生さん向けの授業の内容を具体的に紹介します。😄
私がやっている漢字授業
新規漢字導入
私の初級授業では約10個ぐらいの漢字(読み&書き)を50分で導入、練習しています。
まず、スライドを使用して、新しい漢字を見せて、全体で確認します。
ここでは、テキストに書いてある「音読み」と「訓読み」、そしてその漢字の主な「意味」を確認します。
意味は別に英語ではなくともいいと思いますが、文法の授業でやっていない漢字を扱う場合は対訳も書いてあげたほうが学生はほっとするかと思います。
漢字の授業では私は必ず「語彙の意味」も一緒に導入、確認、復習しています。
大学の授業は、漢字だけの授業なので、文法とセットになっていません。
学生によって語彙力がまちまちなので、新規漢字をつかった語彙も覚えてもらうために、スライドに絵を入れたり、ときには対訳をつけたりして工夫しています。
これが結構学生に好評で、アンケートに「スライドわかりやすい!」と意見をもらっています。
みなさんすでにやられていると思いますけど……😅
色は「いろんな色を使わないように」心がけています。
文法のスライドもそうですが、必ず色に意味をもたせ、私の授業ではカラーに統一感を持たせています。
たとえば、このスライドでは新しい読みは「赤字」、訓読みは吹き出しを黄色、音読みは水色に必ずしています。
この漢字語彙のスライドで私は結構時間を使います。
漢字の授業ですけど、「女の子はどうして待っていますか?」とか、「結婚式のとき誰を招待しますか?」とか学生とのやりとりを増やすように心がけています。
思わぬ語彙で、盛り上がったりしますので、時間が押すので注意です(笑)
全体で読みを確認するために、リピートします。
この一連の時間では、学生には漢字の書きの練習時間は設けていません。
あくまで「読み」をフォーカスするよう、学生に前を見て、聞いてとお願いし、メリハリをつけるよう心がけています。
学生の中には書きたいって人もいますし、知っているから自分で先を進めたいという人もいるでしょう。
しかし、私の経験では「情報提供しているときに聞かない学生ほど結果的にどこかでつまづく」ので、「説明聞いて参加する時間」「一人で書いて練習する時間」を分けるようにしています。
漢字語彙の導入が終わったら、読みの確認をフラッシュカード形式でします。
上記のように、導入した語彙をスライドにして、全体で言わせる感じで私はやっています。
この時点で言えなくても問題ないです👍(覚える活動はこの後、別にありますので)
チャレンジのつもりのフラッシュカードです。
ここまでが漢字導入です。これを10個やります(笑)
ここまでをまとめると……
こんな流れです。
文で読む練習
全ての漢字を導入し終わったら、導入した漢字語彙を使った文を読む練習を全体でします。
たとえばですが、こんな感じ↑で学生の日本語レベルに合わせて文章をオリジナルで作っています。
文法と同じで、日常生活でよく使用する場面や会話の文がいいかと😄
画像のスライドを見ていただくとわかると思いますが、まだやっていない難しい漢字のみルビをふって、勉強したはずの漢字にはルビはふっていません。
今日やっている漢字だけルビなしにしたほうが学生の負担は減りますが、それだといつまで経ってもルビに頼ってしまうので、私はスパルタ式でやっています(笑)
このスライドの進め方ですが、読める学生はどんどん先に答えを言ってしまうので、考える時間を3秒ほど設けて、「いち、に、さん、はい」みたいに一斉に各自のペースで声に出し読んでもらっています。
その後ルビありのスライドを見せて、答え確認のため、私が読んだ後みんなにもリピートしてもらいます。
なかなか漢字混じりの文を読めない学生はもちろんいます。
その学生は自分でテキストを確認したり、他の学生の答えを聞きながら口ずさんでいます。
ここではとりあえず「チャレンジして文で読んでみる」ことで、「自分が読める漢字、読めない漢字」を意識してもらいます。
また、ここまでが今日の漢字を覚えるための「第一段階」です。
ペアで覚える活動「漢字かるた」
たぶんここまでは、わりとみなさんやられている漢字の授業で、これが終わったら書きの練習〜というのが一般的な漢字授業の流れなのではと思います。
(少なくとも私が見学させていただいた先生の漢字授業はそうでした。)
私の漢字授業はここから2ステージあります(笑)
漢字は覚えてなんぼ!だと思いますので、なるべく授業中に漢字を覚えて帰ってほしい!!というのが私の願いです。
漢字を記憶するためにはいろんな方法があると思いますが、私はその中でも覚える活動のために、「紙のフラッシュカード」を作成しています。
ペアで今日の漢字10個の漢字熟語と文(スライドで提示したもの)を確認してもらう活動で、これまた学生に好評です。
でも作成準備がめちゃくちゃ大変なので、個人で準備するというより、学校全体で共有できる教材として作成したほうがいいと思います!!😅
フラッシュカードの原紙作り方は、シンプルです。
導入時に使用したスライドをコピーし、「語彙のフラッシュカード」部分と「文のルビなし」だけ残して他のページは削除→印刷の設定→レイアウト→ページ数/枚を「9」にする。
そうすると、簡単に「漢字かるた」ができます。
この「漢字かるた」を10セットほど準備しています(笑)
学生の人数が多ければもっと必要になるかと……できればペアで一つあったほうがいいので。
印刷も結構な量がありますし、なにせカットするのが面倒なので、個人で準備するのは本当におすすめしません!!😩
日本語学校にお勤めの方は、学校に掛け合って作成されるのがおすすめです(笑)
毎期同じテキストを使うなら、一回作ってしまえば使い回すことが可能ですので、学校に設置すれば絵カードのように誰でも何度でも使えますよ。
担当教師間でシェアできる教材です!
活動:ペアでフラッシュカード
このかるたを使って、まずはペアで全体で確認した漢字語彙の読みを復習してもらいます。
お互いに問題を出し合って、答えを確認する作業です。
もちろんペアの相手が言えなかったら、教え合ってもらいます。
このとき、教科書を見てもOKです。
また、この活動では日本語だけでなく、英語や彼らの母語を使用して相手に説明することを私は推奨しています。
学生が自分の言葉を用いて文法や語彙の意味を説明することを通じて、第二言語についての理解を深めていく「ランゲージング(languaging)」は効果があることが研究で示唆されているので、学生同士のペア活動を見守っています。
ランゲージングについて興味がある方は以下の論文が面白いです(英語学習の話ですが日本語教育にも関連するので載せておきます)↓
鈴木 渉(2015)「ランゲージングが第二言語学習に与える効果」 ランゲージングが第二言語学習に与える効果 – 日本英語検定協会
ペアで語彙の読みの確認が終わったら、スライドで確認した文を読む練習をしてもらいます。
何度も繰り返し声に出して確認するよう促します。
活動2:かるたゲーム
ペアで読みの確認が終わったら、各自ペアで、漢字語彙のカードのみ机の上に広げてもらいます。
教師がカードの漢字語彙を読んで、ペアで取り合い、とれたカードの枚数を競うゲーム「かるた」をします。
「かるた」をやる前に、並べたカードを暗記する「暗記タイム」2分ほどを設けていますが、めちゃくちゃ学生が集中して覚えようとすしているのがわかるぐらい教室がしんと静まりかえります(笑)
こういうゲームには興味がなさそうにしていた学生も、やると結構本気になるので面白いです🤣
ただ、怪我に注意!(笑)
競技かるたを取り上げている漫画「ちはやふる」を知っていた学生は「『かるた』やってみたかったからうれしい!」と言ってくれ、わたしもうれしくなったことがあります。
あくまで私の肌感覚ですが、この「かるた」をやると学生はかなり漢字の授業に積極的に取り組んでくれるようになった気がします。
先述しましたが、漢字は学生によっては「自分には不要、会話だけできればいいし……」「覚えるのが苦手」などモチベーションが上がらず、結果クラスの雰囲気もなんかどんよりしてしまいがちです😅
ちょっとした息抜きみたいに対戦ゲームを取り入れたら、どんな学生もやっぱり「相手に勝ちたくなる」……そのためには「暗記」が必要だ!とその場で目的が発生し、本気モードに変わる。
観察していると実に面白いです。
余談ですが、私はこの「かるた」の勝者には毎回、シールをプレゼントしています。
それもまたモチベーションになるみたいで、ただの100均のシールなんですが、国籍性別年齢問わず、みんな「ほしい!!」といって頑張ります(笑)
特に「パンダ」と「柴犬」シールが人気です(笑)
授業の1、2回目でペアに全然勝てないとわかった学生は、家で漢字を予習してくるようになりました。
結果、小テストは毎回読み書きともに満点、中間、期末テストは文法はボロボロだったのに、漢字はほぼ満点でしたから、「かるた」はモチベーション向上に役に立っている気がします。(私個人の見解ですが)
ここまでが「漢字の読み」のパートです。
おすすめの漢字テキスト
※このサイトはAmazonアフィリエイトを使用しており、本のタイトルからAmazonサイトの本の紹介ページに飛びますが、出版社から依頼されて記事を書いてはおりません。あくまで、さじここ本人の見解で書いています。
※テキストタイトルをクリックするとAmazonサイトに飛び、サンプルが見られます。
こちらは初級の教科書「げんき」に準拠している漢字テキストです。
このテキストは漢字語彙などに英訳が付いていて、漢字の成り立ちをイラストで表してくれていて視覚的にもおもしろいテキストです。
練習用の「KANJI LOOK AND LEARN Workbook」もあるので、漢字授業としては使いやすいです。
②「どんどんつながる漢字練習帳 初級 (日本語文字学習シリーズ) 」
こちらのテキストは、タイトル通り、同じパーツの漢字をどんどん繋げて覚えていこう!っていうコンセプトのテキストです。
イラストがかわいい🩷
視覚的にも入ってきますから、覚えやすいのではと思います。
翻訳には英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語があります。
テキストのイラストは以下の別冊↓でなんとデータが売っているらしいです!!(知らなかった!)
「CD-ROM付 どんどんつながる漢字練習帳 初級 イラスト&漢字データ集 (日本語文字学習シリーズ)」
何かの教科書に準拠はしていないようですが、テキストに準拠しなくても関連性でどんどん覚えていく方法も面白いと思います😄
まとめ
私が実際にやっている「漢字授業」がなんとなく伝わったでしょうか?
私の方法が正しいとか、全ての学生に合った方法とか、そういうのでは全くなくありません。
あくまでこんな授業方法もありますよ〜という情報提供の一つとして書きました。
正直、自分の授業をさまざまな人に読まれるブログで発信するのは恥ずかしいです😅
私はいろんな先生の授業見学に行き、そこで見聞きしたその授業のいいところを取り入れ、自分に合うようにアレンジし、今の形に落ち着きました。
でも、いいと思った方法はどんどんいろんな方にシェアして広めたほうがいいと思いますから、この「漢字の授業」を公開することにしました。
また、なかなか他の先生の授業見学ができない日本語教師の方もいらっしゃると思いましたので、一つの情報源になれば幸いです。
長くなったので、「書きパート」の記事はその②に書きました↓
便利グッズやおすすめテキスト、私が実際にやっている漢字の活動も紹介していますので、こちらもお読みいただけるとうれしいです。
また、ブログ記事を更新するときにnoteでお知らせしています。
noteではブログで書ききれなかった個人的見解などを書いたりしています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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